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「〇〇円〜」と書けば安全ではない|2026年9月の措置命令に学ぶ最低価格表示の落とし穴

2026年9月18日、消費者庁は家族葬サービスのテレビCMについて措置命令を行いました。「家族葬 10.45万円〜(税込)」と表示していたものの、実際にはそのサービスの提供を受けるには僅かな場合を除き30万8,000円以上の費用が必要だったためです。注目すべきは、「〜」を付けていたにもかかわらず有利誤認と認定された点です。その価格のプランが存在していても、実質的にほとんど利用できないのであれば、「最低料金として提供されるかのように表示していた」と評価されます。
この記事のポイント
- 命令日: 2026年9月18日(令和8年9月18日)
- 根拠: 景品表示法第5条第2号(有利誤認表示)
- 表示: テレビCMで「家族葬 10.45万円〜(税込)」
- 実際: 僅かな場合を除き30万8,000円以上が必要(約3倍)
- 論点: 「〜から」表示でも、実質的に利用できない最低価格なら有利誤認になり得る
- もう一つの論点: CM制作を外部に委ねていても、表示内容の決定に関与していると認定
「〇〇円〜」という書き方は、価格訴求の定番です。最低価格を示しつつ、価格が変動することも示唆できるため、安全な表現だと考えられがちです。しかし今回の事例は、その前提を問い直すものでした。本記事では、公表資料をもとに何が問題とされたのかを整理し、価格表示のチェックポイントを解説します。
2026年9月18日の措置命令:何が問題とされたか
事案の概要
消費者庁の公表資料によると、対象となったのは「小さな森の家」という屋号で提供されていた、貸切ホールを用いる家族葬の葬儀サービスです。
地上波のテレビコマーシャルにおいて、次のような表示が行われていました。
- 「1日1組 貸切ホール」との文字の映像
- 「選べるホールがこんなに」との音声と文字の映像
- 「お得なプランがこの価格から」との音声と共に「家族葬 10.45万円〜(税込)」との文字の映像
消費者庁は、これらの表示により「あたかも、本件役務が、最低料金として10万4,500円で提供されるかのように表示していた」と認定しました。
実際の価格

表示されていた10万4,500円に対し、実際に必要な費用は約3倍の30万8,000円以上。しかもそれが「僅かな場合を除き」という状況でした。
命令された内容
景品表示法第5条第2号(有利誤認表示)に該当するとして、同法第7条第1項に基づき次の措置が命じられています。
- 当該表示が景品表示法に違反するものである旨を、速やかに一般消費者に周知徹底すること(周知方法は事前に消費者庁長官の承認が必要)
- 同様の表示が行われることを防止するために必要な措置を講じ、従業員に周知徹底すること
- 今後、同様の表示を行わないこと
- 周知徹底および措置について、速やかに文書で消費者庁長官に報告すること
なぜ「〜」を付けていても違反になるのか
「表示が嘘ではない」ことと「誤認させない」ことは別
今回の事例で重要なのは、10万4,500円のプランが存在しないとは認定されていない点です。問題とされたのは、そのプランが僅かな場合にしか利用できないにもかかわらず、あたかもそれが標準的な最低料金であるかのように表示していたことです。
景品表示法第5条第2号は、取引条件について「実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」を禁止しています。条文が問うているのは表示の真偽ではなく、一般消費者が受ける印象と実際との乖離です。
「〜から」という記号は、価格が上がる可能性を示唆します。しかし一般消費者は、そこから「3倍近くになる」「実質的にその価格では利用できない」とまでは読み取りません。この認識のずれが、有利誤認として評価されます。
判断は表示全体で行われる
今回のCMでは、「1日1組 貸切ホール」「選べるホールがこんなに」「お得なプランがこの価格から」といった訴求と組み合わせて価格が示されていました。
価格表示を単独で見るのではなく、周辺の訴求と組み合わせて何が伝わるかで判断されます。「お得なプランがこの価格から」という音声が、10.45万円を標準的な選択肢として印象づける効果を持っていたと考えられます。
業種別に起きやすいパターン
最低価格表示の問題は、業種を問わず発生します。自社に当てはまるケースがないか確認してください。
① 基本料金のみを表示し、必須オプションを含めていない
表示価格では実質的にサービスを利用できず、必須となるオプションや付随費用を加えると大幅に高くなるケースです。今回の事例もこの類型にあたります。
- 葬儀:式場使用料、火葬料、安置費用等
- 美容医療:初診料、麻酔代、検査費用、薬代
- リフォーム:養生費、廃材処分費、出張費
- 通信サービス:事務手数料、機器レンタル料
② 最低価格の適用条件が極端に限定的
該当するプランは存在するが、適用条件が厳しく実際にはほとんど選ばれないケースです。
- 特定の時間帯・曜日限定
- 在庫が極端に少ない
- 特定の条件を満たす顧客のみ対象
③ 「最安値」が旧モデル・終売品
表示している最低価格が、実質的に販売していない商品のものであるケースです。
④ キャンペーン価格を常態的に表示
期間限定を謳いながら、実際には常にその価格で提供しているケースは、二重価格表示の問題にもつながります。
チェック時の確認ポイント
価格表示を確認する際の実務的な観点を整理します。
① その価格で実際に何件成約しているか確認する
最も確実なのは、表示している最低価格での実績を確認することです。「そのプランは存在します」という回答ではなく、実際にどの程度の割合で選ばれているのかを確認します。
今回の事例の「僅かな場合を除き」という認定は、まさにこの実態を問題にしたものです。
② 必須費用を洗い出し、総額が分かる表示になっているか確認する
表示価格に含まれていない必須費用がないかを確認します。含まれていない場合、その内容と金額が明瞭に表示されているかを見ます。
③ 周辺の訴求と組み合わせた印象を確認する
価格表示だけを見るのではなく、キャッチコピーやナレーションと組み合わせて確認します。「お得な」「この価格から」といった表現が、最低価格を標準的な価格に見せていないかという観点です。
④ 打消し表示が機能しているか確認する
価格の注記や条件説明が、一般消費者に認識できる形で表示されているかを確認します。文字が小さすぎる、表示時間が短すぎる、背景と同化しているといった場合、記載があっても機能していないと評価され得ます。
⑤ 媒体ごとに確認する
テレビCM、Web広告、LP、店頭POPなど、媒体ごとに表示できる情報量が異なります。本体サイトでは条件を説明していても、CMやバナー単体で見たときに誤認を生じないかを個別に確認する必要があります。
制作を外注していても、責任は広告主にある
今回の公表資料には、見落とせない記載があります。
金宝堂は、本件役務に係るテレビコマーシャルの表示内容の決定について広告制作等を行う事業者に委ねることにより、当該表示内容の決定に関与している。
CMの制作を外部事業者に委ねていたことが明記されたうえで、それをもって表示内容の決定に関与していると認定されています。
景品表示法の規制対象は「自己の供給する商品・役務」の表示であるため、責任主体は広告主です。制作を外注していても、その事実が免責につながるわけではありません。
制作会社・代理店に表現を任せている場合でも、最終的な表示内容の確認は広告主側の責任として行う必要があります。
チェック工数という課題
価格表示の確認が難しいのは、広告の文言だけを見ても判断できない点にあります。
実際に必要な費用、最低価格プランの利用実態、オプションの必須性といった情報は、広告原稿には書かれていません。営業部門や商品企画部門に確認しなければ、誤認が生じているかどうかを判断できないのです。
さらに、テレビCMや動画広告では、音声・テロップ・映像が組み合わさって印象を形成します。文字情報だけを追っても、全体として何が伝わるかは把握しきれません。
「広告チェックAI」では、テキストだけでなく画像や動画をアップロードするだけで、景品表示法・薬機法をはじめとした各種法令に抵触する可能性のある表現を検知し、代替表現の提案まで行うことができます。処理速度の目安は、Webバナー1〜2枚であれば10秒以内、1〜3分程度の動画でも2〜3分程度です。
動画広告であればテロップと映像を含めて判定できるため、制作物が仕上がった段階で気軽に一次チェックをかけられます。 担当者は、価格の実態確認や社内調整といった、人でなければできない作業に集中できます。料金は初期費用無料で、月額制でご利用いただけます。価格訴求を含む広告のチェック体制に課題を感じている方は、ぜひ資料請求でプランの詳細や料金をご確認ください。
よくある質問
Q. 「〜から」と書いていれば、価格が上がっても問題ありませんか?
いいえ、問題となる場合があります。 2026年9月の事例では「10.45万円〜」と表示していましたが、実際には僅かな場合を除き30万8,000円以上が必要であったため、有利誤認表示と認定されました。記号の有無ではなく、一般消費者が受ける印象と実際との乖離で判断されます。
Q. 表示している最低価格のプランが実在すれば大丈夫ですか?
プランの実在だけでは足りません。そのプランが実質的にほとんど利用できない状況であれば、最低料金として提供されるかのような表示と評価され得ます。実際の提供実態が問われます。
Q. 必須オプションの費用は、必ず総額で表示する必要がありますか?
総額表示が義務づけられているわけではありませんが、表示価格だけではサービスを利用できない場合、その旨と追加費用が明瞭に表示されている必要があります。注記が小さすぎる、分かりにくいといった場合は、記載があっても誤認を防げていないと評価され得ます。
Q. CM制作を代理店に任せていた場合、代理店の責任になりますか?
景品表示法上の責任主体は、商品・役務を供給する広告主です。今回の事例でも、制作を外部事業者に委ねていたことをもって、広告主が表示内容の決定に関与していると認定されています。制作の外注は免責理由になりません。
Q. 措置命令を受けると、どのような対応が必要ですか?
違反である旨の一般消費者への周知徹底、再発防止策の策定と従業員への周知、同様の表示の停止、消費者庁への報告が命じられます。周知徹底の方法については、事前に消費者庁長官の承認を受ける必要があります。
まとめ
2026年9月の措置命令から読み取るべきポイントは次の3点です。
- 「〜から」を付けても、実質的に利用できない最低価格であれば有利誤認となり得る
- 判断は価格表示単独ではなく、周辺の訴求と組み合わせた全体の印象で行われる
- 制作を外注していても、表示内容の決定に関与しているとして広告主が責任を負う
価格訴求は、あらゆる業種の広告で使われる基本的な手法です。だからこそ、「他社もやっている」「嘘は書いていない」という感覚で進めると、実態との乖離に気づきにくくなります。表示している価格で実際に何件成約しているか、という事実の確認から始めることをおすすめします。
出典: 消費者庁「株式会社金宝堂に対する景品表示法に基づく措置命令について」(令和8年9月18日)、景品表示法第5条第2号・第7条第1項
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