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インフルエンサー投稿そのものが違反に|SNOW事案が示すステマ規制の転換点(2026年8月)

2026.09.29

2026年8月6日、消費者庁は写真加工アプリ「SNOW」の提供事業者2社に対し、ステルスマーケティング告示に基づく措置命令を行いました。この事案が重要なのは、インフルエンサーのSNS投稿そのものが違反認定された初のケースだからです。これまでのステマ告示事案は、依頼した投稿を自社サイトに転載した行為が問題とされてきました。「自社サイトに載せなければ大丈夫」という前提は、もはや通用しません。

この記事のポイント

  • 命令日: 2026年8月6日(令和8年8月6日)
  • 対象事業者: Snow Corporation(韓国)およびSNOW Japan株式会社の2社
  • 根拠: 景品表示法第5条第3号(ステルスマーケティング告示・令和5年内閣府告示第19号)
  • 初のポイント①: 自社サイトへの転載を伴わない、SNS投稿そのものの違反認定
  • 初のポイント②: X(旧Twitter)が対象媒体となった初の事案
  • 対象投稿: 72件(令和7年4月2日〜令和8年6月25日の期間に表示)
  • 投稿内容: 虚偽や誇大表現は一切なし。PR表記の欠落のみが問題

インフルエンサー施策を行っている企業にとって、この事案は運用の前提を見直す契機になります。本記事では、公表資料をもとに何が違反とされたのかを整理し、実務上の対応を解説します。

SNOW事案の概要:何がステマ規制違反とされたのか

何が起きたのか

消費者庁の公表資料によると、SNOW Japanは第三者に対し、対価の提供を条件に、同社が指示する方針に沿った投稿をXにすることを依頼していました。その結果、当該第三者が投稿を行ったものの、SNOW Japanが依頼した投稿であることが明らかにされていなかったため、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難な表示に該当すると判断されました。

対象となった投稿は、別表に記載されているだけで72件にのぼります。

親会社にも命令が出ている

注目すべきは、日本法人だけでなく韓国の親会社Snow Corporationにも措置命令が出ている点です。

公表資料によれば、Snow CorporationはSNOW Japanの議決権を全て保有し、代表理事がSNOW Japanの代表取締役を兼任しています。そしてSnow Corporationは、SNOW Japanに対して日本国内の表示内容の決定を委ねていました。

消費者庁は、この委任関係をもってSnow Corporationも表示内容の決定に関与していると認定し、両社に命令を出しています。海外本社が日本法人に販促を委託している構造であっても、本社が責任を免れるわけではないことを示す事例です。

【ステマ措置命令】過去の違反事例と何が違うのか

図:違反認定の対象・表示媒体・命令の対象という3つの観点で、SNOW事案は過去の事案と異なる。

ステマ告示に基づく措置命令は、2024年以降これまでにも出されています。RIZAP(chocoZAP)、大正製薬、ロート製薬、ダイエットプレミアム、フレイスラボ、高光製薬といった事案です。

しかし、SNOW事案には**2つの「初」**があります。要点を対比すると次のとおりです。

比較項目これまでの事案SNOW事案(2026年8月)
違反認定の対象インフルエンサー投稿を自社サイト・ECモールに転載した行為SNS上の投稿そのもの(転載行為は問題になっていない)
表示媒体すべてInstagramX(旧Twitter)が初
命令の対象国内事業者日本法人+韓国の親会社(表示内容の決定を委ねていた関係)

① 自社サイトへの転載を伴わない違反認定

これまでの事案はいずれも、インフルエンサーの投稿を自社サイトやECモールに転載した行為が違反表示とされてきました。

  • RIZAP:Instagram投稿を自社サイトに転載
  • 大正製薬:依頼したInstagram投稿を、依頼であることを明示せず自社サイトに掲載
  • ロート製薬・ダイエットプレミアム:インフルエンサー投稿を「お客様の声」等として転載
  • 高光製薬:投稿画像を自社サイトや楽天市場・Yahoo!ショッピングに「SNSでも大人気!」として転載

対してSNOW事案では、SNS上のインフルエンサー投稿そのものが違反表示として認定されています。転載行為は問題になっていません。

この違いは実務上、決定的です。「自社サイトに載せなければセーフ」という運用をしていた企業は、前提が崩れることになります。

② X(旧Twitter)が対象となった初の事案

これまでのステマ告示事案は、表示媒体がすべてInstagramでした。SNOW事案は、Xが対象となった初めてのケースです。

媒体を問わず規制が及ぶことは条文上明らかでしたが、実際の執行例が出たことで、X上の施策も当然に対象であることが明確になりました。

違反とされた投稿内容:虚偽表現は一切なかった

この事案でとくに注目すべきは、問題とされた投稿の中身です。公表資料に記載されている投稿内容を見ると、次のようなものです。

  • 「今流行ってるAI生成画像SNOWでやってみた」
  • 「SNOWのAI生成画像めっちゃ簡単でめっちゃ可愛い」
  • 「chatGPT重いけど、SNOWでやってみたらすぐに出来たよ」
  • 「これならプライバシー守りつつ思い出シェアできていいかも おもしろい!」

いずれも、ごく普通の感想投稿です。虚偽の効果を謳っているわけでも、誇大な表現を使っているわけでもありません。子どもの写真をアニメ風に加工して家族の思い出を共有する、といった日常的な内容が大半を占めています。

それでも違反とされたのは、対価を得て依頼に基づき投稿したという事実が開示されていなかったからです。

ここがステマ規制の本質です。表示内容が正しいかどうかではなく、それが事業者による広告であることを消費者が判別できるかどうかが問われています。

「投稿内容に嘘がないから問題ない」という認識は誤りです。内容の正確性と、関係性の明示は、まったく別の論点です。

措置命令で命じられた5つの対応

消費者庁が2社に命じた内容は次のとおりです。

  1. 当該表示を行っている行為を速やかに取りやめること
  2. 当該表示が景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底すること(周知方法は事前に消費者庁長官の承認が必要)
  3. 再発防止策を講じ、役員及び従業員に周知徹底すること
  4. 今後、同様の表示を行わないこと
  5. 周知徹底および措置について、速やかに文書で消費者庁長官に報告すること

周知徹底の方法について事前承認が必要とされている点は、実務上の負担として見落とされがちです。自社で内容を決めて公表すれば済むものではありません。

インフルエンサー施策でステマ違反を防ぐ6つのチェックポイント

この事案を踏まえ、施策の設計段階で確認すべき点を整理します。

① PR表記の徹底をインフルエンサー任せにしない

対価を提供して投稿を依頼する場合、その投稿に関係性の明示(「PR」「広告」「提供」等)が必要です。これを投稿者の裁量に委ねている運用は危険です。

依頼時のガイドラインに明記するだけでなく、投稿後に実際に表記されているかを確認する工程が必要になります。

② 「自社サイトに載せないから大丈夫」という判断を見直す

SNOW事案が示したとおり、転載の有無は違反成立の要件ではありません。SNS上の投稿そのものが事業者の表示と評価されます。

自社メディアへの二次利用の有無にかかわらず、依頼投稿には関係性の明示が必要です。

③ 「指示する方針に沿った投稿」の範囲を認識する

公表資料では、SNOW Japanが「指示する方針に沿った投稿をすることを依頼した」ことが、表示内容の決定への関与と認定されています。

細かい原稿を渡していなくても、方針やテーマを指示している時点で関与と評価され得るという点は認識しておくべきです。「自由に書いてもらっているから広告ではない」という整理は成り立ちにくくなっています。

④ 媒体を問わず同じ基準で運用する

Instagram、X、TikTok、YouTubeなど、媒体によって規制の適用が変わることはありません。媒体ごとに運用ルールが異なっている場合は、統一が必要です。

⑤ 委託構造の中での責任所在を確認する

SNOW事案では、表示内容の決定を委ねていた親会社にも命令が出ています。代理店やグループ会社に施策を委託している場合でも、委託元が責任を免れるとは限りません。

委託契約において、関係性明示の担保をどちらが行うのかを明確にしておく必要があります。

⑥ 投稿の掲載期間を管理する

公表資料を見ると、令和7年4月に投稿されたものが令和8年6月まで表示され続けていた例が多数あります。一度投稿されたものは、削除されない限り表示が継続します。

施策終了後も投稿が残り続けることを前提に、期間管理の考え方を持っておく必要があります。

チェック工数という課題

インフルエンサー施策の確認が難しいのは、確認対象が「量」と「形式」の両面で膨らむからです。

SNOW事案では72件の投稿が対象となりました。起用人数が数十人規模になれば、確認すべき投稿はそれ以上になります。しかも確認対象は投稿文だけではありません。

  • 投稿文のPR表記の有無と、その位置(ハッシュタグの末尾に埋もれていないか)
  • 投稿画像に焼き込まれた文言
  • ストーリーズや短尺動画の中の表示
  • 投稿後に文言が編集されていないか

さらに、関係性の明示という形式面に加えて、投稿内容が薬機法・景品表示法上の問題を含んでいないかという実質面の確認も必要です。とくに化粧品・健康食品の案件では、インフルエンサーが善意で書いた「シミが消えた」といった表現が、別の違反を生みます。

これらを目視だけで、しかも投稿が出るたびにリアルタイムで確認するのは現実的ではありません。

「広告チェックAI」では、テキストだけでなく画像や動画をアップロードするだけで、薬機法・景品表示法をはじめとした各種法令に抵触する可能性のある表現を検知し、代替表現の提案まで行うことができます。処理速度の目安は、Webバナー1〜2枚であれば10秒以内、1〜3分程度の動画でも2〜3分程度です。

投稿前の原稿確認と、投稿後のクリエイティブ確認を、同じ基準で高速に回せるため、起用人数が増えても品質を保てます。自社ルールの追加にも対応しているので、案件ごとの表現ガイドラインを組み込んだ運用も可能です。インフルエンサー施策のチェック体制に課題を感じている方は、ぜひ資料請求でサービス内容をご確認ください。

よくある質問

Q. 投稿内容に嘘がなければ、PR表記は不要ですか?

いいえ、必要です。 SNOW事案で問題とされた投稿は、いずれも「かわいい」「簡単にできた」といった通常の感想であり、虚偽や誇大表現は含まれていませんでした。それでも違反と認定されたのは、対価を得た依頼投稿であることが開示されていなかったためです。内容の正確性と関係性の明示は別の論点です。

Q. 自社サイトに転載しなければ問題ありませんか?

いいえ、問題となり得ます。 SNOW事案は、自社サイトへの転載を伴わず、SNS上の投稿そのものが違反認定された初のケースです。転載の有無は違反成立の要件ではありません。

Q. Instagram以外のSNSも規制対象ですか?

はい。ステマ告示は媒体を限定していません。SNOW事案はXが対象となった初の事案ですが、TikTokやYouTubeなど他の媒体も当然に対象です。

Q. インフルエンサーに自由に書いてもらっていれば広告になりませんか?

公表資料では、事業者が「指示する方針に沿った投稿をすることを依頼した」ことをもって、表示内容の決定に関与していると認定されています。詳細な原稿を渡していなくても、方針やテーマを指示し対価を提供している場合は、事業者の表示と評価される可能性があります。

Q. 海外本社が施策を主導している場合、日本法人だけが責任を負いますか?

SNOW事案では、日本法人に表示内容の決定を委ねていた韓国の親会社にも措置命令が出ています。委任関係にあっても、委託元が責任を免れるとは限りません。

Q. 措置命令を受けると、どのような対応が必要ですか?

表示の取りやめ、一般消費者への周知徹底、再発防止策の策定と役職員への周知、消費者庁への報告が命じられます。とくに周知徹底の方法については、事前に消費者庁長官の承認を受ける必要があります。

まとめ

SNOW事案がインフルエンサー施策の実務に与える示唆は、次の3点です。

  • SNS上の投稿そのものが違反認定される。 自社サイトへの転載の有無は関係ない
  • 投稿内容が正しくても、関係性が明示されていなければ違反となる。 内容の正確性と関係性明示は別の論点
  • 方針を指示して対価を提供していれば、表示内容の決定に関与していると評価され得る

これまで「転載しなければ大丈夫」という認識で運用していた企業は、施策の設計から見直す必要があります。依頼段階でのガイドライン整備と、投稿後の実地確認を、業務フローに組み込んでおくことが現実的な対策です。

出典: 消費者庁「「SNOW」と称するアプリケーションの利用サービスの提供事業者2社に対する景品表示法に基づく措置命令について」(令和8年8月6日)、景品表示法第5条第3号、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年内閣府告示第19号)


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