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誇大広告と最終確認画面は「セット」で見られている|特商法・行政処分11案件の執行パターン分析

2026.09.15

2024年以降に行われた通信販売への特定商取引法に基づく行政処分11案件のうち、10案件が「誇大広告(法第12条)」と「最終確認画面の表示違反(法第12条の6)」のセット適用となっています。行政は広告の表現だけ、あるいは申込画面の表示だけを個別に見ているのではなく、広告で誘引してから申し込ませるまでの導線全体を一体の問題として評価しているという構造が読み取れます。広告担当とEC・カート担当が別々にチェックしている体制では、この構造的リスクは防げません。

この記事のポイント

  • セット適用率: 90.9%(2024年以降の処分11案件中10案件が「誇大広告」+「最終確認画面」)
  • 誇大広告の内訳: 11案件中8案件が効果効能表示の合理的根拠に関する違反(法第12条の2)
  • 行政の執行体制: 2023年9月、消費者庁取引対策課内に「デジタル班」を設置
  • 処分の重さ: 業務停止命令(6か月)に加え、代表者個人への業務禁止命令も
  • 行政指導の傾向: 解約受付の電話番号不備(法第11条)に集中

「広告表現は法務がチェックしている」「カート画面はEC部門が管理している」。この分業は一見合理的に見えますが、行政の執行実態を見ると、両者の隙間にこそリスクが生じています。本記事では、実際の処分事例から読み取れる執行パターンを整理します。

データで見る執行の実態

処分件数の推移

改正特定商取引法が施行された2022年6月以降、国による通信販売への行政処分件数は次のように推移しています。

時期処分案件数
2023年6月時点1案件
2024年3月以降8案件
2025年(11月まで)3案件

施行直後は1案件にとどまっていましたが、2023年9月に消費者庁取引対策課内に「デジタル班」が設置された以降、法執行が集中的に行われるようになりました。2024年12月には東京都も1案件(3社)の処分を行っており、自治体との連携も見られます。

セット適用という顕著な傾向

図:行政は「広告・LPでの誘引(法12条)→最終確認画面での誤認表示(法12条の6)→解約導線の不備(法11条)」という一連の流れを一体として評価している。一方、社内では広告を法務、カート画面をEC部門、解約対応をカスタマーサポートが個別に管理しているケースが多く、この分断が構造的リスクを生んでいる。

違反内容には明確な傾向があります。

2024年以降の処分11案件中10案件が、「誇大広告(法第12条)」と「最終確認画面の表示違反(法第12条の6)」のセット適用です。

さらに内訳を見ると、11案件中8案件が、商品の効能効果表示の裏付けとなる合理的な根拠を求める法第12条の2に基づく誇大広告(優良誤認)の違反認定となっています。通販定期購入で消費者相談が多い品目が化粧品や健康食品であることが背景にあります。

残る3案件についても、景品表示法での違反認定が多い「No.1」表示(優良誤認)、二重価格表示(有利誤認)、契約解除に関する表示(優良誤認)に対して、特商法の誇大広告として違反認定が行われています。

なぜセットになるのか

この傾向が示すのは、行政が**「数値・画像・動画を用いた過剰な即効性の訴求により顧客を誘引し、契約内容を誤認させる最終確認画面で申し込ませる」という一連の流れを、構造的な問題として取り締まっている**ということです。

言い換えれば、次のような分業意識はリスクを生みます。

  • 広告表現 → 法務・薬事がチェック
  • カート・最終確認画面 → EC・システム部門が管理
  • 解約導線 → カスタマーサポート部門が運用

それぞれが個別に問題ないと判断しても、導線全体として「誤認させて申し込ませる設計」になっていないかという観点でのチェックが抜け落ちるためです。

【特商法違反】行政処分でセット適用された3つの導線違反パターン

実際の処分事例から抽出された典型的な違反パターンを、適用条項とあわせて整理します。

類型1:2回目を受け取らない場合の高額手数料を表示しない

内容: 定期購入契約の2回目を受け取らない場合に高額な手数料がかかるにもかかわらず、広告および最終確認画面にその旨の表示がないもの。

主な適用条項:

  • 誇大広告(法第12条)有利誤認、事実相違(分量・価格・支払の時期及び方法・引渡時期・解除)
  • 最終確認画面における誤認表示(法第12条の6第2項)

類型2:容易に解約できるように示しながら、実際は煩雑

内容: 最終確認画面にて容易に解約ができるように示しておきながら、実際には煩雑な手続を要するもの。

主な適用条項:

  • 誇大広告(法第12条)優良誤認
  • 最終確認画面の表示義務違反(法第12条の6第1項)(解除)

類型3:単品お試しに見せて、実際は定期購入

内容: 広告および最終確認画面にて、当該ページからは単品のお試し購入を申し込むことになるかのように示しておきながら、実際には定期購入契約を申し込むことになるもの。

主な適用条項:

  • 誇大広告(法第12条)有利誤認、事実相違(分量・価格・支払の時期及び方法・引渡時期・解除)
  • 最終確認画面の表示義務違反(法第12条の6第1項)(分量・価格・支払の時期及び方法・引渡時期・解除)
  • 最終確認画面における誤認表示(法第12条の6第2項)

いずれの類型も、広告と最終確認画面の両方に適用条項が及んでいる点に注目してください。これがセット適用の実態です。

行政指導の段階で何が見られているか

処分に至らない行政指導の段階にも、行政の着眼点が表れています。

解約窓口の電話番号不備に集中

行政指導は2023年9月〜2024年4月で6案件、2024年5月〜12月で6案件行われています。適用条項の件数ベースでは、広告表示義務違反(法第11条)が14件と集中しています。

とくに目立つのが、解約受付の電話番号に関する不備です。2024年5月〜12月の6案件のうち3案件が、定期購入契約で電話での解約を受け付けているにもかかわらず、広告に確実に連絡が取れる電話番号を表示していなかった疑いによるものでした。

指導対象がプラットフォームから事業者へ移行

指導対象にも変化が見られます。2023年9月〜2024年4月では6案件中4案件がプラットフォーム事業者に対するものでしたが、2024年5月〜12月では6案件すべてが事業者に対するものへと移行しています。

「モールに出店しているからプラットフォーム側が対応してくれる」という期待は成り立たない状況といえます。

注意喚起は約1,159件

消費者庁は通販サイトのモニタリング調査により、事業者への注意喚起通知も行っています。2024年4月から12月末までの9か月間で**約1,159件(うちネット通販435件)**が発出されています。

処分・指導という表に出る対応の背後に、はるかに多い件数の注意喚起が存在します。

相談件数の実態

行政がここまで執行を強めている背景には、消費者被害の実態があります。

消費生活相談件数は年間約90万件前後で推移しており、そのうち通信販売の相談は約3割を占めます。2024年度は33万5千件(全体の36.8%)に達しました。

そのうち定期購入に関する相談は、2023年度に一時減少したものの、2024年度は89,044件と再び増加に転じています。2025年度も前年同期と同水準で推移しており、高止まりの状態が続いています。

相談内容の中心は、化粧品や健康食品といった美容・健康商材のインターネット通販で、「SNS広告等を見て『1回限り』『回数縛りなし』と確認したが、実際は複数回受け取りが条件の定期購入だった」というケースです。

処分を受けた場合の影響

特商法違反による業務停止命令は、事業への影響が大きい処分です。

  • 業務停止期間中は対象業務ができない(6か月の例が複数)
  • 事業者名・代表者氏名が公表される
  • 代表者個人への業務禁止命令が併せて出される場合がある

代表者への業務禁止命令が出された場合、その期間中は新たな通販事業を開始することも、他の通販会社の役員に就任することもできません。法人だけでなく個人にも及ぶ点は、経営判断として認識しておくべきリスクです。

部署をまたぐチェック体制をどう作るか

セット適用という執行実態を踏まえると、次の観点が必要になります。

① 広告とカート画面を「同じ人が通しで」確認する工程を置く

分業自体は否定しませんが、導線全体を一気通貫で確認する工程をどこかに置く必要があります。LPの訴求内容と、最終確認画面の表示内容、そして実際の解約フローが整合しているかを、同じ視点で確認する担当を決めておくことが有効です。

② 広告で使った表現が、契約条件と一致しているか確認する

「いつでも解約可能」「回数縛りなし」といった訴求を使う場合、それが実際の契約条件・解約フローと完全に一致しているかを確認します。類型2・類型3は、まさにこの不一致が原因です。

③ 解約導線の実地確認を定期的に行う

解約窓口の電話番号が実際につながるか、記載された方法で本当に解約できるか、担当者が実際に試す運用が有効です。行政指導が電話番号不備に集中している事実は、ここが盲点になりやすいことを示しています。

④ 効果効能表示の根拠資料を整備する

11案件中8案件が合理的根拠に関する違反です。化粧品・健康食品を扱う場合、表示している効果について根拠資料を提出できる状態を維持しておく必要があります。

チェック工数という課題

実務上の難しさは、確認すべき対象が広告クリエイティブ・LP・カート画面・解約ページと複数媒体にまたがる点にあります。

加えて、効果効能表示については薬機法・景品表示法の観点も同時に関わります。同じ「シミが消える」という表現が、薬機法上は未承認医薬品の広告、景品表示法上は優良誤認表示、特商法上は誇大広告と、複数の法令で問題となり得ます。部署ごとに異なる法令を見ていては、全体像が把握できません。

「広告チェックAI」では、テキストだけでなく画像や動画をアップロードするだけで、薬機法・景品表示法・特定商取引法をはじめとした各種法令に抵触する可能性のある表現を横断的に検知し、代替表現の提案まで行うことができます。

本記事のテーマに引きつけて言えば、LPのバナー、商品ページ、最終確認画面のスクリーンショット、動画広告まで、同じ基準で一気通貫にチェックできる点が、導線全体を評価する行政の視点と噛み合います。部署ごとに異なる担当者・異なる法令知識で確認していた作業を、共通の一次チェックに集約できます。処理も高速で、Webバナー1〜2枚であれば10秒以内、1〜3分程度の動画でも2〜3分程度が目安です。制作物が仕上がるたびに気軽にかけられるため、公開直前の手戻りを防げます。

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よくある質問

Q. 誇大広告と最終確認画面は、別々にチェックすれば十分ではないですか?

いいえ、不十分です。 2024年以降の処分11案件中10案件がセット適用となっており、行政は広告での誘引から申込みまでの導線全体を一体として評価しています。個別に問題がなくても、組み合わせによって誤認を生じさせる設計と判断される可能性があります。

Q. 景品表示法ではなく特商法で処分されるのはなぜですか?

誇大広告だけであれば景品表示法の優良誤認表示として処理されることもありますが、最終確認画面の表示義務違反など特商法固有の違反が併存する場合、特商法に基づく処分が行われます。2024年以降の処分では、この併存パターンが大半を占めています。

Q. 「いつでも解約可能」と書くこと自体がNGですか?

表示自体が一律に禁止されるわけではありません。問題となるのは、そう表示しながら実際には煩雑な手続を要する場合です(類型2)。表示内容と実際の運用が一致していることが前提になります。

Q. モールに出店している場合、プラットフォーム側が対応してくれますか?

行政指導の対象は、2024年5月以降、すべて事業者自身に対するものへと移行しています。プラットフォーム側の対応に依存するのではなく、出店事業者自身が表示を管理する必要があります。

Q. 解約の電話番号はどこまで記載が必要ですか?

定期購入契約で電話での解約を受け付けている場合、広告に確実に連絡が取れる電話番号を表示する必要があります(法第11条)。行政指導ではこの点の不備が集中的に指摘されています。つながらない番号や、記載のない状態は問題となります。

まとめ

2024年以降の特商法執行から読み取るべきポイントは次の3点です。

  • 処分11案件中10案件が「誇大広告」と「最終確認画面」のセット適用。 行政は導線全体を一体として評価している
  • 行政指導は解約窓口の電話番号不備に集中。 表示だけでなく、実際につながるかどうかが見られている
  • 指導対象はプラットフォームから事業者自身へ移行。 モール出店でも自社で管理する必要がある

広告表現とカート画面を別々の部署が管理している体制では、その隙間に構造的なリスクが残ります。導線全体を通しで確認する工程を、業務フローのどこかに組み込んでおくことが現実的な対策です。

出典: 消費者庁による通信販売事業者への行政処分・行政指導事例(2023年〜2025年)、国民生活センター「2024年度 全国の消費生活相談の状況−PIO-NETより−」(2025年8月6日公表)、特定商取引法第11条・第12条・第12条の2・第12条の6


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