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その雑貨、広告表現次第で「医療機器」になります|マスク・サポーター・美容機器の薬事該当性

2026.09.14

薬機法の適用を受けるかどうかは、商品そのものではなく何を標ぼうしているかで決まります。サポーターやインソールは基本的に薬機法の対象外ですが、「関節痛の緩和」「血行促進」と広告に書いた瞬間、医療機器に該当し得ます。承認を受けていない製品を医療機器として広告すれば薬機法第68条違反となり、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象です。「うちは雑貨だから薬機法は関係ない」という認識は、最も危険な誤解のひとつです。

この記事のポイント

  • 判断基準: 商品の形状や名称ではなく、広告での「標ぼう内容」で薬事該当性が決まる
  • 対象となる商品例: マスク、除菌グッズ、サポーター、インソール、美容機器、スマートウォッチ、エッセンシャルオイル、入浴剤、ジェルネイル等
  • 違反時の罰則: 薬機法第85条により2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(併科あり)
  • 典型的なNG標ぼう: 関節痛の緩和、血行促進、むくみ改善、脂肪燃焼、殺菌、ウイルス不活化、シミの除去

雑貨や健康グッズを扱う事業者の多くは、自社商品が薬機法の規制対象だと考えていません。しかし実務では、広告の一文が原因で商品が「未承認の医療機器」と評価されるケースがあります。本記事では、東京都の監視指導資料をもとに、商品カテゴリ別の判断基準を整理します。

薬事該当性は「商品」ではなく「標ぼう」で決まる

同じ商品でも、書き方次第で区分が変わる

薬機法における医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器の定義は、いずれも「〜することが目的とされている物」という書き方になっています。つまり、使用目的が判断基準です。

そして広告・パッケージでの標ぼう内容は、この「目的」を推認させる重要な材料になります。同じ形状のサポーターでも、「関節を固定します」と書くのか「関節痛を緩和します」と書くのかで、評価が変わり得るということです。

そもそも「広告」と判断される3要件

薬機法上、広告に該当するかどうかは次の3要件で判断されます(平成10年9月29日医薬監第148号)。

要件内容
顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
一般人が認知できる状態であること

この3点すべてを満たすと広告とみなされます。 商品ページ、LP、SNS投稿、パッケージのいずれも、要件を満たせば広告です。

違反した場合の罰則

承認・認証を受けていない医薬品・医療機器・再生医療等製品について、その名称・製造方法・効能・効果・性能に関する広告をすることは、薬機法第68条で禁止されています。

違反した場合の罰則は、薬機法第85条により2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金、またはその併科です。景品表示法の課徴金とは異なり、刑事罰である点に注意が必要です。

商品カテゴリ別:薬事該当性の判断基準

東京都の監視指導資料に示されている判断基準を、カテゴリ別に整理します。

マスク(不織布等)

区分内容
薬事非該当不織布等でできており、単に物理的な除去を目的とするもの
問題となる標ぼう細菌やウイルスに対する殺菌・不活化効果、感染症予防(例:「新型インフルエンザウイルスの不活化」)

除菌を目的とするもの

区分内容
薬事非該当ふき取ること、洗い流すこと等により除菌を標ぼうしている場合
医薬品・医薬部外品に該当殺菌による菌の除去を明らかに目的としている場合

「除菌」と「殺菌」の違いが分岐点です。物理的に取り除くのか、菌を殺すのかで区分が変わります。

サポーター

区分内容
薬事非該当基本的には非該当(磁気治療器を除く)
医療機器に該当適用部分を強く圧迫するような材質等であって、関節痛等の効能効果を標ぼうするもの
問題となる標ぼう関節痛の緩和、血行促進、体質改善、むくみの改善、骨盤矯正等

インソール・靴

区分内容
薬事非該当基本的には非該当(磁気治療器を除く)
問題となる標ぼう関節痛の緩和、疾病の予防等の効能効果

美容関連器具

区分内容
薬事非該当身体の構造・機能に影響を与えないもので、単に美容(洗顔や化粧品を塗る動作の代用程度)を目的とする場合
標ぼう可能な範囲肌のキメを整える、肌を滑らかに保つ等(化粧品に認められている効能と同程度の範囲)、生えている毛のみを物理的に切断
医療機器に該当シミ・ソバカスの除去、たるみを引き締め小顔に、血行の改善、新陳代謝促進、毛根に作用して半永久脱毛

なお、HIFU(高密度焦点式超音波)を人体に照射し、皮膚のしわ・たるみの改善や痩身効果を標ぼうする機器は、医療機器に該当するとされています。

筋肉運動補助器具

区分内容
医療機器非該当筋肉の運動のみを目的としている場合
問題となる標ぼう肩や腰にあててコリをほぐす、運動後の筋肉の疲れに有効、脂肪減少作用

マッサージ関連機器

区分内容
医療機器(該当)マッサージ効果等を標ぼうするもの
雑貨(非該当)単にモーターで振動するおもちゃ
健康器具(非該当)単なる突起物(指圧代用器・足踏み健康器具)。ただし電動式を除く

非電動式の指圧代用器については、「あんま、指圧の代用」「健康によい」「筋肉の疲れをとる」「血行をよくする」「筋肉のこりをほぐす」の標ぼうが認められています(昭和45年12月15日薬発第1136号)。

エッセンシャルオイル

区分内容
化粧品非該当空間・水の芳香付けを行うことを目的とする場合
化粧品に該当身体への芳香付け、肌への効果を標ぼうするもの
問題となる標ぼう香りの吸入により鼻やのどの調子をよくする、中枢神経を刺激してうつの改善・食欲増進

浴用製品(入浴剤等)

区分内容
薬事非該当「色を楽しむ(お風呂の着色料)」「香りを楽しむ(お風呂の香料)」のみの目的である場合
化粧品・医薬部外品に該当上記以外の効果を目的とする場合

スマートウォッチ

近年とくに判断が必要な領域です。

区分内容
医療機器と判断されるもの血圧の測定機能、体温の測定機能、疾病の兆候の検出等を目的とした血中酸素飽和度の測定機能、心電図の測定機能、睡眠の質の測定機能
雑貨でも標ぼう可能な範囲健康な者を対象として、運動におけるトレーニングの効果効率の向上・運動強度の管理を目的として血中酸素飽和度を測定するもの、運動管理目的で心拍数を測定するもの

ジェルネイル

区分内容
化粧品に該当ベースジェル(直接爪に塗布するため)
化粧品非該当カラージェル/トップジェル(直接爪に塗布しないことが明らかである場合)

なお、カラージェルやトップジェルという名称であっても、使用方法等から直接爪に塗布しないことが明らかでない場合は、化粧品に該当するとされています。

その他

  • 手袋:医療機関等で交差感染を防ぐ目的のものは医療機器。掃除用・園芸用等、単に手に汚れがつかないことを目的とするものは非該当
  • 虫除け:衛生害虫(はえ、蚊、のみ等)の駆除・忌避を目的とする場合は医薬品または医薬部外品。植物を虫から守る園芸用は非該当
  • 集音器:聴力障害者の聴力を補助する目的は医療機器。健常者を対象に騒がしい環境で遠くの音を拡張して聞く目的なら非該当
  • 体温計:ヒトの体温測定は医療機器。料理・飲み物・風呂等の温度測定目的は非該当

NG標ぼうをどう言い換えるか:考え方の方向性

「では、どう書けば雑貨のまま訴求できるのか」が次の疑問になるはずです。ここで前提を明確にしておきます。

以下の例は、行政が「この表現なら問題ない」と認めたものではありません。 薬事該当性は広告全体から判断されるため、言い換えた文言単体で可否が決まるわけではありません。また、商品の構造や使用方法によっても結論が変わります。あくまで、表現を見直す際の考え方の方向性を示す例として参照してください。

薬事該当となり得る標ぼう考え方の方向性(例)
関節痛の緩和、血行促進(サポーター)身体機能への作用を示さず、フィット感・固定性・素材の特性といった物理的な特徴として伝える
コリをほぐす、筋肉の疲れをとる(筋トレ器具)身体への治療的効果を示さず、トレーニング機器としての用途に限定して伝える
シミの除去、たるみの引き締め(美容機器)化粧品に認められている効能の範囲(肌のキメを整える、肌を滑らかに保つ等)に留める
ウイルスの不活化、感染症予防(マスク)殺菌・不活化ではなく、素材による物理的な捕集・遮断という機能として伝える

言い換えの背後にある3つの原則

個別の文言を覚えるより、次の原則を押さえるほうが応用が効きます。

原則①:身体の構造・機能への作用を示さない 「血行が良くなる」「代謝が上がる」といった身体機能への影響は、医薬品・医療機器の定義に直結します。

原則②:疾病の治療・予防を連想させない 「関節痛」「肩こり」「むくみ」といった症状名を効果の対象として挙げると、治療目的と評価されやすくなります。

原則③:物理的な作用として説明できる範囲に留める 「拭き取る」「捕集する」「固定する」といった物理的な機能であれば、薬事非該当の範囲に収まりやすくなります。逆に「殺す」「浸透する」「作用する」といった語は該当性を高めます。

実際の不適事例

東京都の資料には、具体的な不適事例が掲載されています。どこが問題なのかを確認しておきましょう。

事例1:筋肉運動補助器具

これは、手軽に筋肉のトレーニングができる電動式スポーツマシンです。そして、そればかりではありません。仕事に疲れた時には肩や首に装着してこりをほぐしたり、ふくらはぎに巻いて運動後の足の疲れをとったりできる万能マシンなのです。

前半の「筋肉のトレーニング」だけなら問題ありませんが、後半の「こりをほぐす」「足の疲れをとる」が医療機器的な効能の標ぼうにあたります。訴求を追加したことで区分が変わってしまう典型例です。

事例2:マッサージ関連機器

足の健康は体の健康を反映します。足を刺激することにより、肝臓・腎臓の悪い方・視力が落ちている方など様々な健康上の悩みをお持ちの方も、よい結果を得られます。使っているうちに脂肪燃焼効果が期待できます。

特定の臓器や疾病への効果、脂肪燃焼効果の標ぼうが問題となります。

事例3:美容関連器具

この器具の微弱な振動により、肌のシワ構造を改善し、10年前のお肌を作ります。また、モードを変えると皮膚のシミを薄くする能力があります。医療機器の機能を応用して設計しているので、効果は抜群です。

シワ構造の改善、シミを薄くする効果は、化粧品に認められた効能の範囲を超えています。「医療機器の機能を応用」という記載も、医療機器であることを暗示する表現です。

よくある落とし穴

① 「ついでの一言」で区分が変わる

事例1が示すとおり、本来の用途に加えて別の効果を書き足したことで該当性が生じるケースが多く見られます。訴求ポイントを増やしたいという意図が、結果的にリスクを生みます。

② 商品名やキャッチコピーへの含み

本文で慎重に書いていても、商品名やキャッチコピーに「〇〇ケア」「血行〇〇」といった語を入れることで、全体として効能を標ぼうしていると評価される可能性があります。

③ レビュー・体験談の引用

使用者の声として「肩こりが楽になった」といった内容を掲載する場合、それが事業者による標ぼうと評価される可能性があります。第三者の言葉であれば自由という理解は誤りです。

④ 「医療機器」を連想させる表現

「医療現場でも使われている技術」「クリニックと同じ原理」といった表現は、医療機器であることを暗示するものとして問題になり得ます。

チェックの進め方

① 商品企画の段階で標ぼう範囲を決める

広告制作の段階で判断するのでは遅い場合があります。どこまで訴求するかによって、必要な承認・届出の有無が変わるためです。企画段階で、その商品を薬事該当させるのかどうかを決めておくべきです。

② 訴求ポイントの追加時に必ず確認する

キャンペーンや季節施策で訴求を追加する際、既存の表現と組み合わさることで問題が生じることがあります。追加分だけでなく、ページ全体として何を標ぼうしているかを確認する必要があります。

③ 迷った場合は行政の相談窓口を利用する

東京都の場合、薬事該当性については保健医療局健康安全部薬務課監視指導担当が、予約制の面談による相談を受け付けています。広告代理店・放送媒体からの相談も対象とされています。他の道府県の事業者は、許可を取得している自治体の薬務主管課が窓口です。

判断に迷う事案では、事前に相談しておくことが最も確実な方法です。

チェック工数という課題

雑貨カテゴリの難しさは、判断基準が商品ごとに細かく分かれている点にあります。

本記事で挙げただけでも、根拠となる資料は平成10年の広告該当性通知、昭和45年の指圧代用器に関する通知、令和4年の血中酸素飽和度に関する通知、令和4年の遠赤外線衣類に関する通知、令和5年のHIFUに関する通知と、複数に分散しています。商材ごとに参照すべき通知が異なり、しかも随時更新されるため、担当者がすべてを把握し続けるのは現実的ではありません。

加えて、薬事該当性の問題だけでなく、効果を訴求すれば景品表示法の優良誤認表示のリスクも同時に生じます。バナーや動画のように文字情報が画像・音声に埋め込まれている媒体では、目視での確認漏れも起きやすくなります。

「広告チェックAI」では、テキストだけでなく画像や動画をアップロードするだけで、薬機法・景品表示法をはじめとした各種法令に抵触する可能性のある表現を検知し、代替表現の提案まで行うことができます。処理速度の目安は、Webバナー1〜2枚であれば10秒以内、1〜3分程度の動画でも2〜3分程度です。制作物が仕上がったタイミングで気軽にかけられるため、修正の手戻りを最小限に抑えられます。

商材ごとに異なる複雑な通知ルールを人力で追い続けるより、一次チェックを自動化し、専門家が判断すべき論点に集中する体制のほうが現実的です。自社商品の広告表現に不安がある方は、ぜひ資料請求でサービス内容をご確認ください。

よくある質問

Q. 雑貨なら薬機法は関係ないのではないですか?

いいえ、関係します。 薬機法の各定義は「〜することが目的とされている物」という構造になっており、使用目的によって該当性が判断されます。雑貨として販売していても、広告で医薬品的・医療機器的な効能効果を標ぼうすれば、未承認の医薬品等の広告として薬機法第68条違反となり得ます。

Q. サポーターに「血行促進」と書くのはNGですか?

サポーターについて血行促進等の効能効果を標ぼうすると、医療機器に該当し得るとされています。承認を受けていない製品でこうした標ぼうを行えば、薬機法違反となる可能性があります。

なお、遠赤外線を輻射する衣類等については、令和4年12月14日付通知により取扱いが変更され、着用した使用者自身の体温により血行を促進する使用目的・効果を有する衣類等は、血行促進という標ぼうのみをもって医療機器に該当するとは判断しないとされています。商品の性質により結論が異なるため、個別の確認が必要です。

Q. お客様の声として「肩こりが改善した」と載せるのも問題ですか?

第三者の言葉であっても、事業者がそれを広告に掲載すれば、事業者による標ぼうと評価される可能性があります。レビューの引用だから自由という理解は適切ではありません。

Q. 違反した場合、課徴金の対象になりますか?

薬機法第68条違反(承認前医薬品等の広告の禁止)については、第85条により2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金、またはその併科が定められています。課徴金制度は第66条第1項の虚偽・誇大広告に関するものであり、根拠条文が異なります。

Q. 判断に迷った場合はどこに相談すればよいですか?

東京都内の事業者であれば、製造販売業者は東京都健康安全研究センター広域監視部が、薬事該当性や広告代理店・放送媒体からの相談は保健医療局健康安全部薬務課監視指導担当が窓口となっています(予約制の面談)。他の道府県の事業者は、該当する自治体の薬務主管課に相談してください。

まとめ

雑貨・健康グッズを扱う事業者が押さえておくべきポイントは次の3点です。

  • 薬事該当性は商品ではなく標ぼう内容で決まる。 同じ商品でも、広告での書き方によって医療機器等に該当し得る
  • 典型的なNG標ぼうは、関節痛の緩和、血行促進、むくみ改善、脂肪燃焼、殺菌、ウイルス不活化、シミの除去など
  • 違反時は課徴金ではなく刑事罰(2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金)の対象

訴求を強めたいという意図が、結果的に商品区分を変えてしまうことがあります。企画段階でどこまで標ぼうするかを決め、判断に迷う場合は行政の相談窓口を活用することが、最も確実な進め方です。

出典: 東京都保健医療局健康安全部薬務課監視指導担当「雑貨等の広告について(薬事該当性)」、薬機法第2条・第68条・第85条、平成10年9月29日医薬監第148号、昭和45年12月15日薬発第1136号、令和4年2月3日付薬生監麻発0203第1号、令和4年12月14日付薬生監麻発1214第1号、令和5年3月31日付薬生監麻発0331第12号


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