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【データで見る】景品表示法の指導は年388件・措置命令の約30倍 令和7年度運用状況から読む広告リスクの実像

2026年5月28日、消費者庁が令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の景品表示法運用状況を公表しました。措置命令は13件でしたが、指導は388件と約30倍。さらに優良誤認に関する指導だけで315件、健康増進法に基づく食品の誇大広告への指導は589件にのぼります。ニュースで見かける「措置命令」は氷山の一角であり、広告担当者が実際に遭遇する可能性が高いのは、公表されない「指導」です。
広告関連のニュースでは、企業名が公表される措置命令ばかりが目立ちます。しかし、公式データを読み解くと、行政が実際に最も多く行っているのは指導です。そして指導は事業者名が公表されないため、他社事例として学ぶことができません。本記事では、消費者庁の公表資料をもとに、広告担当者が本当に備えるべきリスクの実像を整理します。
令和7年度の数字:措置命令13件に対し、指導388件
処理件数の全体像
消費者庁が公表した令和7年度の処理状況は次のとおりです。
| 処理区分 | 令和5年度 | 令和6年度 | 令和7年度 |
|---|---|---|---|
| 措置命令 | 44件 | 26件 | 13件 |
| 確約計画の認定 | ― | 1件 | 8件 |
| 指導 | 85件 | 339件 | 388件 |
| 調査件数 | 229件 | 437件 | 454件 |
措置命令は44件→26件→13件と3年連続で減少している一方、指導は85件→339件→388件と急増しています。調査件数自体は454件と増えており、行政の活動量が落ちたわけではありません。処分の形が「措置命令」から「指導」や「確約計画の認定」へとシフトしている構図が読み取れます。

課徴金は10件・総額3億3,940万円
課徴金納付命令は10件、総額3億3,940万円でした。前年度(19億2,696万円)、前々年度(20億4,419万円)と比べると金額は大幅に減少していますが、これは個別案件の規模による変動が大きく、単純に「リスクが下がった」とは言えません。1件あたりで見れば、最高額は1億7,262万円にのぼります。
現場目線で読むべき数字:「優良誤認の指導315件」
措置命令と指導で、違反類型の分布がまったく違う
ここからが本記事の本題です。措置命令と指導を、違反類型ごとに分けて見ると、はっきりとした差が現れます。
| 関係法条 | 措置命令・確約計画の認定 | 指導 |
|---|---|---|
| 第5条第1号(優良誤認) | 4件 | 315件 |
| 第5条第2号(有利誤認) | 13件 | 61件 |
| ステルスマーケティング告示 | 4件 | 7件 |
| 原産国告示 | 2件 | 5件 |
措置命令における優良誤認はわずか4件ですが、指導では315件。指導全体(389件・延べ数)の8割以上を優良誤認が占めています。
これは何を意味するのか。優良誤認については、不実証広告規制(景品表示法第7条第2項)により、行政が期限を定めて裏付け資料の提出を求め、提出がない場合や合理的根拠と認められない場合には不当表示とみなすことができる仕組みが整っています。実際、令和7年度の措置命令13件のうち2件でこの規定が適用されています。
それでも措置命令が少数にとどまるのは、措置命令が事業者名の公表を伴い、企業への影響が大きい処分であるため、弁明の機会の付与を含む厳格な手続を要するからです。一方、指導は違反の疑義が生じた段階で迅速に改善を求められる手段であり、行政として柔軟に活用しやすい枠組みといえます。この違いが、件数の差となって表れています。
つまり、化粧品・健康食品のように効果訴求が中心となる商材では、「措置命令になるほどではないが、指導の対象にはなる」表現が、圧倒的なボリュームで存在しているということです。
健康増進法の指導は589件
さらに見逃せないのが、健康増進法に基づく指導の件数です。消費者庁はインターネット上の食品の虚偽・誇大広告を監視しており、令和7年度は健康増進法第65条第1項(誇大表示の禁止)に違反するおそれがある表示について、589件の改善指導を行いました。
景品表示法の指導388件 + 健康増進法の指導589件 = 年間約1,000件
健康食品・サプリメントを扱う事業者にとって、改善指導は「まれに起きる例外」ではなく、日常的に発生している事象です。
食品の広告を扱う事業者は、景品表示法だけでなく健康増進法の観点からも監視対象になっている点を認識しておく必要があります。
インターネット広告への監視は324件
消費者庁は令和5年度から、インターネット上の広告に特化した監視業務を実施しています。令和7年度は、違反するおそれがある表示について324件の改善指導を行いました。指導388件のうち大半がネット広告関連であることがうかがえます。
なぜ「指導」のほうが実務上やっかいなのか
措置命令より処分としては軽い指導ですが、広告担当者の立場で見ると、次のような特有の難しさがあります。
① 事例が公表されないため、他社から学べない
措置命令は企業名と違反内容が公表されるため、他社事例として社内共有できます。しかし指導は原則として事業者名が公表されません。消費者庁の運用状況資料でも、指導事例は事業者名を伏せ、内容も一部加工したうえで「主な事件」として数例が紹介されるにとどまります。
つまり、自社が指導を受けるまで、何がNGとされているのかを知る機会がないという構造です。
② 発生確率が桁違いに高い
措置命令13件に対し、指導は388件。単純計算で約30倍の発生頻度です。「うちは大企業ではないから措置命令にはならないだろう」という認識で構えていると、はるかに確率の高い指導リスクを見落とすことになります。
③ 対応には結局コストがかかる
指導を受ければ、表示の改善対応、社内での原因究明、再発防止策の整備が必要になります。公表されないとはいえ、対応工数と機会損失は実際に発生します。
公表資料から見える「指導されやすい表現」
消費者庁の運用状況資料では、令和7年度に指導が行われた主な事例が紹介されています。広告担当者として押さえておきたいのは、次のようなパターンです。
優良誤認の指導事例
- 福袋の「限定グッズ」表示:福袋限定と表示していたが、実際には単体でも入手できるものだった
- 美容医療の「切開なし」表示:切らずに治療できるかのように表示していたが、実際には切開が必要だった
有利誤認の指導事例
- 「永年無料」表示:契約継続中ずっと無料になるかのように表示していたが、その確実な予定がなかった
- 美容クリニックのクーポン価格:提示価格ですべての症例に対応できるかのように表示していたが、症状により料金が上回る場合があった
ステマ告示の指導事例
- レビュー投稿へのギフトカード付与:星5のレビュー投稿を条件にギフトカードを付与し、事業者の表示であることが明瞭でなかった
- モニター募集サイト経由のサプリメントのレビュー依頼:対価提供を条件に星5投稿を依頼していた
- 自社職員による口コミ投稿:事業者自らが口コミサイトに高評価を投稿していた
これらに共通するのは、いずれも**「悪意のある虚偽」というより、担当者の認識不足や確認漏れから生じやすいタイプの表現**だという点です。
広告担当者が取るべき対策
データから導かれる実務的な示唆は、次のとおりです。
- 効果・効能表現を最優先でチェックする:指導の8割以上が優良誤認。化粧品・健康食品では特に、根拠資料と表示内容の対応関係を明確にしておく
- ネット広告・LPを重点対象にする:インターネット広告への監視は年324件の指導実績があり、更新頻度の高いネット上の表示ほど見落としが生じやすい
- レビュー・口コミの運用ルールを整備する:ステマ告示の指導事例は、いずれもレビュー収集の運用に起因している
- 「措置命令にならなければ大丈夫」という発想を捨てる:発生確率が30倍高い指導への備えこそが実務的
とはいえ、社内のLP・商品ページ・広告クリエイティブを、優良誤認・有利誤認・ステマ告示・薬機法といった複数の観点から横断的に確認するのは、担当者にとって大きな負担です。特に効果・効能表現の線引きは、文脈判断が必要で、キーワード検索だけでは拾いきれません。
「広告チェックAI」では、テキストや画像を入力するだけで、薬機法・景品表示法・健康増進法をはじめとした各種法令に抵触する可能性のある表現を検知し、代替表現の提案まで行うことができます。指導の対象になりやすい効果訴求表現についても、確認の工数を大幅に削減できます。自社の広告表現に不安がある方は、ぜひ資料請求でサービス内容をご確認ください。
よくある質問
Q. 措置命令が減っているのは、規制が緩くなったということですか?
そうとは言えません。調査件数は令和5年度229件→令和7年度454件と増加しており、行政の活動量はむしろ拡大しています。措置命令の減少と同時に、指導(85件→388件)や、令和6年10月に新設された確約計画の認定(8件)が増えており、対応手法が多様化したと見るのが妥当です。
Q. 指導を受けると企業名は公表されますか?
原則として公表されません。消費者庁の運用状況資料でも、指導事例は事業者名を伏せた形で紹介されています。ただし、景品表示法第24条に基づく管理措置の勧告に従わない場合には、その旨を公表できる規定があります。
Q. 確約計画の認定とは何ですか?
令和6年10月1日施行の改正景品表示法で新設された制度です。違反被疑行為について、事業者が自主的な改善計画を申請し、消費者庁が認定することで手続を終了させる仕組みです。令和7年度は8件が認定され、うちステマ告示関連が4件を占めました。返金措置が計画に含まれるケースもあります。
Q. 都道府県による措置命令もありますか?
あります。都道府県知事にも措置命令権限が委任されており、令和7年度は2都県で3件(東京都2件・三重県1件)の措置命令が行われました。件数は国より少ないものの、地域の事業者にとっては身近なリスクです。
まとめ
令和7年度の運用状況が示すのは、「措置命令は減っているが、行政の監視はむしろ強まっている」という実像です。特に押さえておくべきは次の3点です。
- 措置命令13件に対し、指導は388件。実務上遭遇する確率が圧倒的に高いのは指導
- 指導の8割以上が優良誤認(効果・効能表現)。健康増進法の指導も589件
- 指導は公表されないため、他社事例から学ぶことができない
だからこそ、他社の失敗を待つのではなく、自社の表現を能動的に点検する体制が重要になります。この機会に、効果訴求まわりの表現をあらためて見直してみてはいかがでしょうか。
出典: 消費者庁「令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組」(2026年5月28日公表)
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